ASEM Case Studies
ASEM導入事例を紹介します
事例1:橋梁検査

株式会社IHI検査計測では、橋梁構造物の状態評価に向けた実証試験の一環として、ASEMtechの産業用非破壊検査装置 ASEMindtecを導入しました。
本装置は、ASEM技術に基づいており、塗膜を除去することなく、鋼材内部の電磁状態を可視化できる点が特徴です。従来の非破壊検査では困難だった塗膜下の劣化や応力変化の検出が可能となり、インフラ保守の高度化に貢献します。
IHI検査計測では現在、ASEM検査の有効性を検証するため、現場環境下での実証試験を進めています。

事例2:溶接部検査
ASEM法は、鋼材の磁気特性を非破壊・簡便に評価・画像化することが可能であり、これまでも鋼材の組成変性や残留応力評価の研究を実施してきました。
- IEEE T-UFFC 67, 825 (2020): Tensile-stress Dependence of Magnetic Hysteresis Properties Measured by the Acoustically Stimulated Electromagnetic Response in Steel.
- IEEE T-UFFC 69, 1478 (2022): Evaluation of Tensile Residual Stress in Welded Steel Plates Using Acoustically Stimulated Electromagnetic Response.
今回、大手製造メーカーA社からの依頼により、A社にて作製された溶接試験体の評価を行いました。
ASEM画像は磁気分布を表しており、「加熱・冷却に伴う磁気変化(結晶相・結晶粒径等の組成変化)」と「残留応力に伴う磁気変化」の両方の寄与が反映されます。表面には黒皮が残る状態で測定しましたが、黒皮の影響はほとんどないことが確認され、研磨等の表面処理を施すことなく鋼材評価を実施することが可能でした。
表面(溶接面)では、「①溶接後の状態」および「②溶接後熱処理」の両方において、複雑な磁気分布が観測されており、加熱・冷却工程において生じる鋼材の組成的変化が主要因と考えられます。このことは、溶接部周辺の鋼材が不均一に変性していることを示唆します。
一方、裏面では、溶接部を囲むように磁気的変化が観測され、溶接後の応力除去を目的とした熱処理により、その磁気分布が均一化する傾向が観測されています。このことから、裏面におけるASEM画像は残留応力分布が主要因であることが示唆されます。今後、溶接時に生じる鋼材の特性変化を、これまでとは異なる新たな視点で評価し、最適な溶接条件の探索手法の確立、および溶接部における破損リスクの予知を目指していきます。
*本記事は、A社からの了承を得て掲載しています
